« REDBULL RAMPAGE 2019 | トップページ | SMITHのご紹介 »

2019/10/30

Redbull Rampage 2019

P5pb17909260  

今回のブログは非常にマニアックな個人的な感想です。長文なので飛ばしてもらって大丈夫。でも少しでも共感してもらえたら嬉しい。

 

今回のレッドブルランページは僕の中で特別な回で、それは何でかって言うと他の参加ライダー達もおそらく同様で、ジョディーランを偲んでのランページだったと言う事です。

 

ジョディーはランページの2週間前にフィルミング中の不慮のクラッシュで亡くなってしまいました。

 

セメナックがゴール後にジョディー追悼の意を込めたステッカー(「Rough AF」と言うジョディーの動画シリーズの名前)を指差していたのが印象的。ラン後のインタビューでもジョディーの事を話していた時、少し涙ぐんでいたように思います。僕も今回のランページではジョディーを想って3回ほど泣きました。

 

ジョディーと仲が良かった同じカナディアンのアギーはゴール後におもむろにプッシュアップを始めてましたね。それは日頃から腕立て伏せで体を鍛えていた自重筋トレマニアのジョディーを表現していたんだと思います。数人のカナディアンライダーは今回のランページはジョディーのために走ると言っていました。

 

ブレンダンフェアクローの2本目のランの時、大岩ドロップの上でフェアクローはランを中断してプッシュアップを始めました。あれもジョディーを想っての行動だったんです。

 

ランページ前は参加ライダーと観客全員はプッシュアップをやってジョディーを追悼している映像を見ました。ジョーディー・ランという男はそれほどまでに皆に愛されていた偉大なライダーだったのです(過去にUCI DHランキングでカナディアン最高位、人気MTBムービーには毎回セグメントを持ち、コーク720をMTB史上初めて成功させたなどの功績を残し、それ以外にも全身タトウーで皆に愛されたキャラでした)。

 

さて競技の内容はと言うと、今回は誰もが認める世界ナンバーワンフリーライダーのセメナックが超絶スキルを持って見事勝利を飾りました。最初のドロップからオポ360で決めて余裕ありまくり。その後もスーサイドノーハンダーや450フリップを繰り出し、ビッグドロップでのバックフリップワンフットキャンキャンと最後のフットプラント360は流石としか言いようがありませんでした。全てのトリックをいとも簡単そうにサラッと決めて、ゴールしたら90点台ですよ。動きが滑らか過ぎて凄い事をやっているかが分かりにくかったかもしれませんね。

 

2位のリーダーも良かったですね。ベストトリックを受賞したフラットドロップでの軸ズレバックフリップワンフットキャンキャンにはシビれました。1本目は全体的にスピードが足らず後輪をケースしまくって得点が出ていませんでしたが、2本目からは完璧に合わせてきました。最後のオポフラットスピンもバッチリ決めての90点台。

 

3位のトムヴァンスティーンバーゲンもファーストドロップでフロントフリップ、そして去年に続きビッグドロップでのフラットドロップバックフリップからのバックフリップワンフットキャンキャンは見事でした。

 

個人的に熱かったライダーはやはりらコンデギーでしょうか。1本目でフラットスピンを飛びすぎた後、続けざまにバックフリップをしたけどアンダーローテーションでクラッシュ。頭を打ってフラついて、多分一瞬意識飛んでましたよね。悔しくて何度も拳で地面を打ち付けていたのはよほど悔しかったのでしょう。あのクラッシュでよく2本目を飛んだなと思いましたよ。彼のランページに賭ける気持ちが伝わってきて僕も込み上げるものがありました。そして2本目は少し抑えめに同じルーティーンで走り、1本目に転倒した場所でのバックフリップを見事にメイク。

 

ところがランディングがそれてとんでもないラフな場所に着地したにも関わらず、見事過ぎるリカバリーで会場を沸かしていました。彼の凄いところは全体的なスピードが速い事。下ってくる勢いが半端じゃないんですね。難しいラインチョイス、トリックとスタイル、流れとコントロール、動きの滑らかさ、などのジャッジ基準のどれを取っても当てはまっていたように思います。

 

しかし最終ジャンプでフラットスピンをメイクできなかったのは本当に惜しかったと思います。あれがなかったらポディウムは確実だったなあ。たまたま強風が吹いたのかもしれませんね。

 

他に気になったライダーはカイルストレイト。過去に2度優勝経験があるだけに、下りのこなしはピカイチでビッグドロップでのスイノーハンドのフロント下りがエグイ!彼のシグネイチャートリックですね。もう1つのシグネイチャートリックである、最初のドロップでのアンターンダウンもかなりイケてました。1本目に繰り出したニュートリックのバックフリップスーサイドノーハンダーも良かったですね。奥さんのレイチェル、激カワですわ~笑

 

他にも気になったライダーはエグいラインを攻め続けたザイモンや、キレキレの走りを見せたビニーT、スムースでいてビッグドロップでのバッフリップを決めたTマック、そしてレーサーらしい超速ランからのキャニオンギャップでのバックフリップとバックフリップタックノーハンダーを決めたフェアクローなど、とても良いランだらけの今回のランページ。

 

1本目の選手がスタートした時間帯に風がなかったのが良くて、みんな良いランをしていました。これはオーガナイザーがグッジョブで開始を1時間遅らせたのが功を奏したように思います。転倒が少なかったので途中中断も少なくスムースに競技が進んでいたと感じました。

 

各ライダーのレベルが数年前と比較すると格段に上がっています。今までスロープスタイルバイクやハードテールでやっていたトリックをビッグバイクでやる事がプロライダーの間では今や当たり前になっていて、世界的にレベル上がっていますね。日本だけ何も変わっていないと言う。なんともせつない。

 

と言う事で今回のランページはジョディー追悼、セメナック優勝、どのライダーも良いランをしたと、そんな印象のランページでした。

まだまだ解説したいライダーも多いし書きたい事は沢山あるけど、最後に1つだけ。

 

ランページはただ危険で過激な命知らずのスポーツだと日本のメディアなどに紹介されている事は僕はどうしても納得がいかない。

 

超人的なスキルと肉体は彼らの日頃からの努力の結果で身につけ、バカでかいセクションの距離や高さは実は緻密に計算され物理的な安全がある程度確保されたものである事。

 

各ライダー達はプロライダーで結成されたディガーチームを作り何日も前から現地入りして自分自身の走るラインを建設している事。彼らは言わば一般の人では計算しきれない規模感のセクションを造れてしまうセクション造成のスペシャリストでもあると言う事。実はいろいろな根拠が存在している、見せ物だけのスポーツではないと言う事を強く言いたいのです。

 

彼らの超人的なスキルは子供の頃から毎日毎日ひたすらMTBに乗って培い、プロになってからは科学的な運動生理学などのトレーニングも取り入れてこの競技と向かい合っているのです。

 

アクションスポーツなのでちゃらけて見えたりアホに見えてしまう部分があると思うけど、見えない所でみんな常人以上の努力を積み重ね文字通り命を懸けているのです。

 

これは大げさではなく真実であって僕はそれが最高にカッコいいと思うんですよ。

 

オイオイ、なんか大げさなことを言っているな~と思うかもしれませんが、過去17年間カナダに行き続けてフリーライドの技術を磨き、彼らと同じFMBA(フリーライドマウンテンバイクアソシエーション)のライセンスを持つ立場の自分からすれば、全く大げさではなく共感しかできないのです。

と言ってもなかなか理解してもらえないと思うけど、僕は今後も発信し続けたいと思います。ジョディーの生きた意味を少しでも多くの人に理解してもらうためにも。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

|

« REDBULL RAMPAGE 2019 | トップページ | SMITHのご紹介 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« REDBULL RAMPAGE 2019 | トップページ | SMITHのご紹介 »