RedBull Rampage 2022終了
年に一度のビッグマウンテンフリーライドイベントであるRed Bull Rampage が先日終わりましたね。
このイベントはFMBシリーズの中でもポイント配点の高いウィスラーのRed Bull JOYRIDEスロープスタイルと並ぶダイヤモンドグレードのイベント。
世界の選ばし者だけがスタートを切る事が出来るフリーライダーのトップ中のトップを決定するコンテスト。
世界中のプロフリーライダーの誰しもがこのコンテストに出場する事に憧れを持ち日々ライディングを磨いています。
今年もそのナンバーワンが決まりましたね。
今回のポイントは3つ。
(1)シングルクラウンフォーク
(2)転倒者ゼロ
(3)強風でキャンセルになってしまった2本目
なんとなく大きく分けるとこの3つが個人的には見所だったかなと思います。
まず1つ目のシングルクラウンフォークに関しては昨年同様にブランドン・セメナックがシングルクラウンフォークを導入。
プラクティスでテールウィップやダウンサイドテールウィップを練習していたので昨年同様にハンドルを回すトリックを織り交ぜたランが想像できました。
ところがセメナックの1本目ではバースピンとテールウィップのドロップだけに留まり、後はワンフットインバートとフラットスピンナックナックで締めて終了。
ダウンサイドテールウィップはプラクティスで失敗していたので1本目ではやらずに、もしかしたら2本目でバックフリップテールウィップと共に追加してやったかもしれませんね。
残念だったのはバースピンドロップの後に途中で一瞬映りが悪くなりキャム・マッコールが実況解説で言っていたステップアップでやったであろう、スタイリッシュテーブルが見たかった。
それに対して同じくシングルクラウンを導入したかつてのチームメイトのブレッド・リーダーはドロップでのテールウィップをしっかりとメイクし、その他にフラットドロップでのバックフリップキャンキャン、360ドロップ、オポ360ドロップとかなり難易度の高いトリックを良い流れで決めてきました。
あの高さでのきっかけのないフラットドロップでのオフアクシスバックフリップキャンキャンは個人的にシビレました。もはや彼のシグネチャームーブですね。怪我からの復帰戦でランページで勝つなんて信じられん。
もう1人のシングルクラウンライダーだったディラン・スタークはシングルクラウンを活かしたバースピンやテールウィップ系のトリックは結果的には出さなかったものの、本番でいきなり見せたレールでのクランクグラインドからのドロップには度肝を抜かれましたね。
彼のディガークルー達は隠していたレールを本番前に急遽設置した様です。練習なしの1発勝負ですよ。イカれてますよね。
BMXの流れをMTBに持ってきたディランは最高にクールでした。
次のポイント(2)の転倒者ゼロに関して。これも重要で過去のランページでは転倒者が何人も出て度々コンテストが中断。
重篤な怪我を負うライダーもいたりして見ていて辛かった。けれど今年はみんなクリーンなランをして誰もクラッシュしませんでしたね。
これって年々各ライダーのレベルが上がっている証拠でもあって、特に360ドロップなんかは合わせるのが難しい事から過去のランページでは転倒者続出の高難易度トリックでした。
それが今年はみんなビタビタに合わせてきてクリーンなランばかりでした。
それと1本目のランと言う事で余力を残して走ったライダーが多かった事もその要因なのかもしれません。
でも逆を言えば1本目は余力を残してランをする事しか出来なかったとも言い換える事が出来て、1本目からイケイケのフルアタックをした優勝のリーダーと2位のゴジエックはリスペクトに値し納得の順位だったのだと個人的に思います。
確かにセメナックはもっと他のトリックをやっていたら優勝出来たかもしれませんが、彼はそこまでは攻めなかった。
ちなみにセメナックは会場入りしたのが他のライダー達よりも数日遅かった様で今回のランページへの調整が上手くいかなかったと想像します。
彼はランページの直前、アメリカのラリーシリーズ最終戦でナショナルチャンピオンを獲得したばかり。
つい最近までラリーシリーズの最前線で戦っていたので、頭の中を車からMTBにスイッチするのは大変だったのだと思います。
なんとなく表情を見ていたら3位でも十分満足していた様に思いますしね。
最後に2位になったゴジエックのラン。あれはハンパなかった。360ドロップからの立て続けに行ったキャニオンギャップでのバックフリップ。その後のバックフリップスーサイドノーハンダーも決まっていたし、何よりスタートからのスピードが速く勢いがあった。
スタートからゴールまでの流れが素晴らしく、なおかつランページらしいデカいランは納得の得点でした。
いやもっと高くても良かったんじゃないかと思えるほどでしたよね。その辺はPINKBikeのコメント欄も荒れていました。
まあジャッジに関しては毎回不満が出て問題になっていますが、僕個人的にはランページ出場経験のあるジョシュ・ベンダー、ランディ・スパングラー、カイル・ジェイムソン、グレッグ・ワッツ、そしてかつてのフリーライドキングと呼ばれたダレン・ベラクロスがジャッジであれば文句はありません。
彼らは過去のトップライダーでコンペティターであり、各セクションの難しさ、その状況でのトリックの難しさなど一般人には分からない領域まで理解していて、ライダーの気持ちになってジャッジができます。
ジャッジ方法に関しては賛否両論あって、やれスノーボード方式にしろとか、やれフィギュアスケート方式にすべきだとか色々ありますが、今の方式でいいじゃんて個人的に思うのですよ。
参加ライダー達は皆彼らをリスペクトしているし文句は無いと思うんです。
そもそもライダーの立場からすればリザルトは大して気にしてなくて、自分の納得したランがしたい。自分のベストを出したい。他のライダーがイケてるランをすれば素直に褒め称えたい。
意外にもみんなそんな気持ちなんです。
他人との戦いよりも自分との戦いなんですよね。
だからスコアとかじゃなくてその時やれる自分の納得したランが出来ればハッピーなんです。
この話の流れでポイント(3)に関して言うと、それだけに今回は2本目がキャンセルになって観客や視聴者は満足出来なかったかもしれないけど、ライダー達は十分にやり切った感があったと思います。
でもただ1人納得出来なかったライダーがいたとすれば、それはタイラー・マッコールだったでしょう。
彼は唯一スタートからゴールまで辿り着けなかったライダーでした。1本目のランでバックフリップドロップのランディングの時にペダルをスリップしてバランスを崩してその直後のジーアサートンドロップを飛ぶ事が出来なかったんです。
だから2本目に気合を入れていたのにキャンセルになった事はかなりフラストレーションが溜まっていた様でSNSに正直な気持ちをぶつけていました。
今回のランページはESPNが放送権を得てアメリカ全土でライブ中継をしていたのですが、それが大きな問題になりました。
2本目に入る前に30分〜40分のコマーシャルが入る事になっていてすぐにスタート出来なかったみたいですね。
テレビ放送なので当然スポンサーの広告を流す必要があったし、レポーターによる解説やコンピューターグラフィックでの凝った走行プレビューなどの演出も必要だったのでしょう。
今回は風が強くなる天気予報が事前に出ていたので30分繰り上げて競技がスタートされましたが、コマーシャルが終わった2本目に入る頃には強風が吹き付け、2本目はキャンセルになってしまったのです。
各ライダー1人1人のスタートする間隔も長かったので進行がのんびりに感じましたが、それはテレビ放送のために事前にタイムスケジュールが組まれていた事が理由だった様です。
その事情を知ったタイラーが不満を持ったと言う事ですね。そりゃそうですよ。だってライダー達は自分達のために命を張って走っているんですから。
特にタイラーはここ数年間ランページに焦点を絞ってトレーニングを積んでいましたからね。テレビやPCの前の視聴者のためにではなく、自分や自分の大切な人達のために走っているんですから。
オリンピックもそうですが、特にアクションスポーツが商業ビジネスに巻き込まれると一気につまらなくなる、と言われています。
テレビ放送されてメジャーになる事でより人気が出てマーケットが拡大し業界が潤う。それはとても良い事だけど悪い面も多い。
これは本当に難しい議題ですが、文化やスタイルが強調されたジャンルのスポーツはこれに当てはまる事が多いと思います。
RedBullランページもその方向へ引き込まれていく事に今後心配でなりません。
今回もランページの興奮は別格でした。年に1度のビッグイベント。現地に行きたい。出られないとしてもディガーとして参加したい。
今回もし天候や怪我で遅延したとしても、ふじてんに出勤しないで予定していたトレイルビルダー養成講座の開始時間を遅らせようとさえしていた事をここで白状します笑
そしてプラクティスで胸椎を骨折して本戦に出場出来なかったカイル・ストレイトは無事に手術を終えて復帰に向けて準備をしているとの事なので良かったです。
もう1人、初参加ROCKYMOUNTAINライダーであるアレックス・ボロコフもプラクティスでクラッシュし本戦に出れなかった事が悔やまれますね。
各ライダーにフューチャーすると話が止まらなくなるので今回はこの辺で。
今から来年が楽しみでなりません。
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