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2023/10/15

Redbull RAMPAGE 2023

Redbullrampage2023camzinkbackflip

photo:Redbull

 

年に1度のビッグイベント。MTBフリーライドの祭典。今回も見所ばかりでしたね。今年はBrandon Semenukが出場しなかった事で少し話題性が薄れていたように感じましたが、とんでもない。彼がいなくても十分興奮し楽しめたRAMPAGEでした。

 

今回の個人的注目すべきトピックは以下の通り。

 

・ジャッジに関して

・スロープスタイル系トリックに関して

・Simon Godziek の転倒

・ビッグマウンテン系ライダー贔屓の空気感

 

 

まずは毎年必ず話題となるジャッジに関して。これは観ている人の主観によって変わってくるものなので、インターネットフォーラムやSNSではみんな言いたい事を言っていますよね。

 

特に多いのは優勝したCam Zinkの95点と言うハイスコアに対してBienvenido Aguadoの79点、Brendan Faircloughの86点と言う予想外に低いスコア。これらの中でも一番言われているのはCam Zinkのスコアに関してでしょうか。

 

これは解説させてもらうと、確実にハイスコアに値します。10年前に彼は同じ場所でバックフリップを成功させました。その時はフラットドロップではなく小さな簡易的なキッカーで回っていたんですよね。上に向いているきっかけを利用して回るのと自分だけのモーションで回るのとでは難易度が段違いで、キッカケなしで回るのはそれだけ多くのエネルギーが必要になりタイミングを取るのも難しくなります。

 

さらに今回は10年前よりも距離が伸びた事でハイスピードで進入し、少し右に方向が変わるのでその辺の調整もしなくてはならない。ほんのり軸ズレで回る事になったのです。そしてその前には巨大ステップダウンからロングギャップの連続セクション。

 

これだけ条件が変わると難易度は数段上がり、メンタルブロックも掛かってきます。滞空時間が長い分、風の影響も受けやすい。それなのに、それを1発メイクなんて神の所業としか思えません。

この事は同じ様なシチュエーションを経験し、バックフリップをやれる人間にしか理解出来ない領域です。

 

それ以外にも彼の良かった所はスタートからノーズボンクドロップをしてスピード感もあり、流れが非常に良かった事。バックフリップナックナックも360ドロップも面ピタでメイクして文句無しのランだったと感じました。

 

彼がバックフリップを回ったアイコンセンダーと呼ばれるセクションは今回の会場で最もデカく高く深いセクションでした。そしてその前の進入条件も難しい。そんなドロップであのありえないバックフリップは、他のどのライダーもやろうとは思わないし、ジャッジ達は高得点を付けざる負えなかったのでしょう。

 

どのライダーが良かったかと言う判断は見た人の主観で決まります。その見る人がランページの様な地形を走った事がなければラインの難しさの違いに気がつく事は出来ないし、バックフリップをやった事のない人にはフラットドロップバックフリップの難しさをイメージ出来ないし、ビッグドロップを飛んだ事のない人には会場内のどのドロップオフも同じ難易度に見えてしまうでしょう。

要は視聴しているその人のライディング経験とスキルは様々なので、見る人によって見え方は全然違ってくると言う事なんです。

 

だからこそジャッジの選任は超重大で、今回のジャッジ陣は過去のランページ出場者でかつ元トップライダー達なんです。出場ライダーの気持ちになってあらゆる要因を考えられないと、正当な評価は下せないと言う事ですね。

 

ちなみにジャッジ達は事前に各ライダー達の走るセクションを回り、距離の計測をして走る地形や進入角度など細かいポイントまでチェックをしていました。

 

 

次に「スロープスタイル系トリックに関して」について。

これは特に北米のライダーが思っているであろう事で、Redbull RAMPAGEはスロープスタイルではなくビッグマウンテンコンテストという事。たとえバースピンやテールウィップをメイクしたとしても、そこがバカでかいセクションやテクニカルなセクションでなければ意味はない。そう感じているでしょう。

 

でも個人的にはビッグマウンテン系ライダー達のセクション程デカくはないにしろ、彼らがこなすセクションは十分過ぎる程巨大であって、そこでテールウィップやトラックドライバー(360エックスアップ)、バックフリップバースピンをメイクする事は並大抵の事ではないと思うんです。

 

けどビッグマウンテン寄りの考えからすると、もしトリックでハイスコアを出したいのであれば、Zinkが回ったアイコンセンダーでやれよという事でしょう。

 

それならば、デカいキャニオンギャップでフロントフリップをメイクしたBienvenido Aguadoのスコアはもっと高くてもいいのでは?と思わされますよね。

さらに、キャニオンギャップでスーサイドノーハンダーをメイクしたBrendan Faircloughのスコアだってもっと高くてもいいのでは?と思われても当然です。その辺のジャッジに関してはモヤモヤ感が残ります。

 

 

次に「ゴジエックの転倒」に関してになりますが、ゴジエックのランは余りにも惜しすぎて僕は本気で数分間うなだれました。なぜなら彼は優勝候補だったからなんです。

 

前半は非常にスピード感がある中でバトルシップをこなし、その後バースピンやトラックドライバー(360エックスアップドロップ)、バックフリップキャンキャンを次々とメイク。練習で何度もメイクしていたビッグキャニオンギャップでのバックフリップとビッグダブルでのダブルバックフリップが、もし転倒しないで決まっていたら。おそらく彼が優勝していたでしょう。

 

なぜなら一番距離の長いキャニオンギャップでバックフリップをしたと言うビッグマウンテンらしさと、さらに高難易度のダブルバックフリップをメイクし、バースピンやトラックドライバー(360エックスアップ)などのスロープスタイルらしさのあるトリックもメイクし、3拍子全てが揃ったランをしていたはずなのだから。

 

Emil Johanssonのランも非常に惜しかった。シングルクラウンを活用したXアップ、トラックドライバードロップ(360エックスアップ)、レギュラー&オポの連続テールウィップドロップ等スタイル出まくりでそのまま行くかと思いきや、惜しくも転倒してしまいました。あのままゴールして欲しかった。ベストスタイルに選ばれた事は良かったですね。

 

 

「ビッグマウンテン系ライダー贔屓の空気感」。これに関しては2位3位となったTom Van Steenvergen、Carson Storchのランはスコアが高過ぎでは?とやや首をかしげてしまいます。

 

確かに彼らはビッグマウンテンらしいラインでバックフリップドロップと360ドロップを連発していましたが、果たしてそれらの得点に見合っていたのか?

 

確かにランページはビッグマウンテンのコンテストではあるけれど、もしスロープスタイル系を否定してしまうと、去年初めてシングルクラウンを採用したセメナックのスロープスタイルとビッグマウンテンを融合させたあのスタイルを参考とした、今回シングルクラウンを採用してバースピン系やテールウィップ系のトリックを織り交ぜたライダー達が意味をなさなくなります。

 

まあでも、それでもビッグマウンテンコンテストのランページでは、複雑なトリックよりも思い切りの良いデカいランとデカいトリックの方がスコアが出やすいと言う事なんでしょう。もしかしたらジャッジ陣やトッププロにしか見えない何か高得点となる要因があったのかもそれない。そこは分からない領域です。

 

個人的には、そろそろ北米だけのジャッジではなくヨーロッパからも適任となるジャッジを招集すべきだと思います。だって今回のジャッジ達は明らかにZINKのランの時に仕事を忘れて両手を挙げて興奮していましたもん(笑)

彼らも人間。友達が良いランをしたら嬉しくなるってもんですよね。分からないでもない。

 

だからこそ、ヨーロッパからも招集すべきだと思うんです。ライダーオブザデイの投票では見事に上位4人はヨーロピアンライダーでしたから。

ピーポーズチョイス、ベストトリック、マクギャーザアワードの3冠を取ったBienvenido Aguadoが別の意味では勝者なのかもしれません。8位の選手が3冠ってのも変な感じしますけどね。

 

今回の議論が深くなっていけば、MTBフリーライドがさらに進化するタイミングになると思います。

 

最後に僕個人的にはCam Zinkのアイコンセンダーでのバックフリップフラットドロップは最高に痺れました。だってあの難しい状況であのデカさでのハイスピードからのフラットドロップバックフリップは前代未聞ですから。まあ95点は少し高過ぎかなとは思いましたが(苦笑)

 

他にもBrendan Faircloughの子供がランページ当日が初めての誕生日だった事やジングの息子がずっとジンクから離れない様子とか、ゴジエックの家族は無茶苦茶心配してるだろうな〜とか、家族がいるライダーを見ると思わず泣けてしまいます。

 

今回ルーキーだったTalus Turk は日本人クオーターでおばあちゃんが長崎に落とされた原爆の被爆者だそうで、そのおばあちゃんの思いを刻んだ梅の花をあしらった彼のバイクのペイントジョブは非常に美しいです。

そして彼のランは素晴らしかったですよね。ルーキーであのキレキレのランとスコアは見事なものです。近年のフリーライドコンテストで頭角を表し今回選ばれました。将来が楽しみなライダーの1人。

 

彼のディガーで同じルームメイトの我がロッキーマウンテンサポートライダーのHayden Zablotnyも実は今年のウィスラーのウィップオフで2位になったり、キャムジンクインビテーショナルの最終日に勝ったりとTalus Turk と同等の激ヤバスキルを持っているのですが、今回は選ばれなくて残念でした。まあロッキーマウンテンはAlex Volokov も頑張っていましたけどね。

 

それ以外にも色々と無限に書けてしまうのでとりあえずこの辺で。

 

あ、本当に最後ですがインタビュアーのティナは肩甲骨を骨折していたそうで右腕を吊っていましたが、実は今の自分も同じで肩甲骨に3箇所クラック入ってます。

これは先日トリック練習中に負った怪我ですが、こんな歳でもまだ攻めている自分を褒めたいと思います。フリーライドは最高です。

 

それではまた。

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