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2024/08/02

2024Red bull JOYRIDE

2024Red bull JOYRIDE終了しました。

毎年恒例のウィスラーバイクパークで開催されるFMB DIAMONDグレードイベントのスロープスタイル。世界のトップスロープスタイラー達が集結し優勝を狙うこの大会。

特にウィスラーでのスロープスタイルは年間の中で1番格式の高い大会。なぜなら ウィスラーは MTBスロープスタイル発祥の地だからです。

ちなみに僕はその発祥となった大会からこの地ウィスラーにて1度も欠かさずライブで観ています(そんなヘンタイは世界中でも稀ではないかと笑)。

 

今回の全体のポイントは以下の通り。

 

【転倒の数】

今回はとにかく転倒が多かった事。しっかりと2本のランを走り切ったライダーは14人中3人だけ。
注目選手達は続々とクラッシュ。Tom Istedは2本共クラッシュ。Paul Couderc、Nicoli Rogatkinは2本目は走りませんでした。

TomとPaulは中足骨骨折。エミルヨハンソンは上腕骨解剖頚骨折。クラッシュだらけ、怪我人だらけでした。

今回数名のライダーがプラクティスの時点で怪我をし、補欠要員として呼ばれたライダー達が急遽出場していました。Lukas KioldやAlex Alankoなんかはそうですね。

クラッシュが多かったと言う事は、各ライダー達が自分の持ち味を出しきれていなかったと言う事でそれがとても残念でした(現在のコースフォーマットは昔の様にいかにデカいセクションでテクニカルに、みたいな事ではなくショー的要素を全面に押し出しているので安全かつ小振りな造りになっています。本来であれば出場ライダー達にとってはマージンのあるコースなのでライダー達は余裕があるはずなんです)。

 

今回のクラッシュの多さの裏にあるのは何かそれは次の項目で。

 

【コースのテクニカルさ】

今回のコースは去年とほぼ同じレイアウトで、かなりシンプルでパッと見た目は簡単そうに見えたはずです。
でも画面では見えないテクニカルさが随所に見られました。

まず一つ目はドロップでスタートした後の連続するダブル。これよく見ると実はウェールテールになっていてスピードの調整が難しく何人も手こずっていました。

Tom istedもコーク720でオーバーローテーションしてましてね。

そしてその後のバーム後のデカい連続した2つのダブル。これらは去年もそうでしたが、ランディングに左右方向に角度が付いていてヒップの形状なんです。

普通にトリックを行うとランディングで角度が付いて微妙に向きが合わないので合わせるのが難しく(45°程回転を調整しなければならない)みんな転倒していました。

そしてその後は通常のダブルとウェールテール。その後はダートスパインの次にクォーター。
そして最終フィーチャーのボナーログ(ストレートな丸太のラダーセクション)が曲者。

ランディングの距離が進入スピードに対して近くさらに落差があるのでオーバーシュートしやすくなっていて、複雑なトリックを行うにはイメージよりも対空時間が確保出来ずにみんな苦戦しまくっていましたね。

しかもボナーログはRの無いストレートな形状。走路からの反発が無いのでトリックが入れにくいんです。

まあ良くもみんなあそこでコンボトリックをやるなぁと。流石世界のトップ中のトップライダー達だなぁと。Tim Bringerのダブルバックフリップは痺れた。

この最終セクションのシンプル化は女子ライダーへの配慮だと僕は思っています。過去に何度かありましたが、ファイナルセクションでクラッシュが続出してしまうと絵的にもマズいですからね。

そんなこんなで一見シンプルそうに見えて実はテクニカルなコースだった事によってクラッシュが頻発してしまった可能性が高いのです。
しかし逆転を賭けた2位のTim Bringerの2本目は惜しかった。ウェールテール進入でのミスが痛かったですね。

優勝のDawid Goziekのランはツイスター+タックノーハンドやキャッシュロール+テールウィップ+バースピン などの大技コンボは文句なしでした。

ビルダー目線で見るとウィスラーの斜面はとても急でさらに横幅も狭く、他種目のセクションも配置しなければならないのでビルダー泣かせなんですね。
今年はウップオフ用のジャンプも真横に造ったのでスロープスタイルコースの最終セクションのボナーログを狭くせざる負えなかったのでしょう。しかしあのスペースにあれだけの種目を押し込んだJOYRIDEディガークルーのビルドスキルはケタ違いだと思います。

 

【絶対王者エミルヨハンソンの欠場】

これはもうホント衝撃的で彼は前日のプラクティスで転倒し上腕骨頭を骨折してしまったのです。やれるだけの処置を施して朝のプラクティスに臨んだそうですが、その朝のプラクティスでも転倒。そして欠場を決意しました。

彼は今年4月に鎖骨を折って最悪のシーズンスタート。怪我の影響で1発目のケアンズで精彩を欠いて2位、さらに調子悪くインスブルックでは3位、そして今回の欠場と彼のキャリアでは考えられない事でした。

だってそれまで彼は2021年から2023年にかけて、スロープスタイルのトリプルクラウン3タイトルをすべて獲得し、13個のゴールドメダルを手にしていたのですからね(ここ数年は彼の出たコンテストは全て優勝)。この数はセメナックを超えています。

でもなんか似てるんですよね〜。プレッシャーを感じ始めてからずっとクラッシュが続き成績が出ない。スタート時の固い表情。それ以前のノビノビとしていた表情とは一変して見ていられない程の厳しい表情。

かつての絶対王者Brandon Semenukと重なります。
彼らのレベルまで到達すると背負うものが大きくなり過ぎて、その重圧は計り知れないのでしょう。。。

今回彼はこのJOYRIDEに照準を合わせてコンディションを整えてきました。相当気合が入っていたに違いありません。実力的にも彼が走っていたら、おそらくGoziek以上のスコアを出していたでしょう。

Emilのオシャレな鬼コンボが見たかった。それだけに残念でならないし、ぶっちゃけ彼が走らなかったという事だけで個人的にはつまらないスロープスタイルだったと言えてしまうかもしれません。

 

【女子カテゴリーの開催】

今年から女子のスロープスタイルがFMBに加わりました。

近年メキメキとレベルが上がっている女子カテゴリー。
MTBが男子だけのスポーツではない事の証明となってとても良い事。

秋のレッドブルランページも女子カテゴリーがあるそうです。
日本の女子ライダーも増やしたいですね。そのためには課題は山積み。

 

【最後に】

かつてSemenukが優勝ランを決めた後に巻き起こった、ウィスラー全体の叫び声の様なあの地響きに近い歓声をここ数年は聞く事が無くなってしまった。

観客数もほぼ横ばい。今回カナディアンライダーが数人出ていましたが、なんかみんなパッとしないんですよね。 
やはりウィスラーローカルSemenukの存在は偉大過ぎました。

色々と思う事はあるけれど、 競技としてはまだ歴史の新しい MTBスロープスタイルですが、MTBスロープスタイルも新たなチャプターに移り変わる必要があるのかもしれない。

女子ライダーを加えた事も変化の一つだと思うけど、まだ何かが足りない気がしますよね。とりあえずはこのまま静観せるしかなさそうです。

余談ですが、自分はアジア人として初めてFMB公認プロカテゴリーのスロープスタイルに出場しましたが、もう10年以上前の話ではあます。
でもそこからアジアで誰1人としてFMB公認スロープスタイラーが出てきてないんですよ。 

日本を含めアジアのスロープスタイル人口の少なさをどうにかしないとマズいんです。
その前にフリーライドやフリースタイルと言うカテゴリーを確立しなければなりませんが。

日本のBMXレベルはどんどん上がっています。ちょうど今フランスではオリンピックが開催されていて、BMXフリースタイルパーク代表のリム君が5位と大健闘しました。

彼は世界選手権で優勝していて文句なしの世界のトップライダー。
MTBも日本人の可能性は十分にある。どうすれば日本人が MTBスロープスタイルで世界のトップになれるのか⁇

その辺の具体的方法や手段は分かっていますが、話も長くなるのでまた別の機会にでも。
だってその前にやる人を増やさないとって言う次元ですしね。

ではまた。

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優勝はやはりこの男。Dawid Goziek。XgamesのBMXダートでゴールドメダルを獲得した経歴があり、近年はMTBに焦点を当てて活動中。ツイスターやキャッシュロールのコンボトリックが得意なライダー。

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今回のジャッジ陣も超豪華。全てのライダーがJOYRIDE出場経験あり。 Conor Macfarlane、geoff gulevich、Peter Henke、Anton Thelander 。主観的な選手の気持ちになれて、客観的な評価を出せる。これ重要。

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女子も頑張っていました。写真はShealen Reno。FMBワールドチャンピオンシップのチャンピオンになりました。今年からFMBが始めたワールドチャンピオンシップシリーズ。スロープスタイルだけのランキングによるチャンピオンです。

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Nicoli Rogatkin。ここからさらにもう一回転回ります。

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当日出場を断念した直後のEmil Johanson。この表情に悔しさが滲み出ていました。

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ダートウェールテール。鯨の背中。速度調整がムズそうでした。

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こちらは連続ヒップ。クラッシュ多かったですね。

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Xgames REALMTBムービーコンテストでゴールドメダルを獲得したTom Van SteenbergenとGreg Wattsも観戦していました。その他にも多くのプロライダーが観戦していましたね。

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毎年ちゃんと観たいので有料観戦席から観戦しています。

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