Red Bull Rampage2024レポート
Red Bull Rampage2024が終わりましたね。自分が1年で最も楽しみにしているこのイベント。今年は例年に比べてとりわけ見応えがありました。
優勝はMTBフリーライド界のスターBrandon Semenuk。あり得ない程の高難易度のランで見事5回目の優勝を飾りました。
2位のSzymon Goziekのランもランページらしいワイルドなランで、スタート後のフラットドロップフロントフリップやビッグドロップでのフラットドロップバックフリップ、そして360ドロップとダブルバックフリップで90点台のハイスコアを叩き出しましたね。
彼は去年優勝候補の1人として注目されていましたが、プラクティスで転倒し本戦には出れませんでした。その経験から今年はこのランページに標準を当てて練習してきました。
ラストのダブルバックフリップは、1回転目のストレッチ気味のローテーションから2回転目の時に体をベンドさせて回転力を増やした回り方が印象的でした(狙ってなのかリカバリーで行ったのかは不明ですが)。
3位のTyler Mccaulのランも素晴らしく、彼は毎年ランページに全てを掛けているにも関わらず今まで報われなかった古株ライダー。
Bienvenido Aguadoと共有したトランスファー気味のビッグキャニオンギャップドロップもキッチリと決め、バックフリップNACなど彼の持ち味を十分に発揮して本人的には満足したランだったでしょう。
今回のランページは過去にない程にレベルが高く、転倒してしまったライダーも含めて全てのライダーのランは高次元でカッコ良かった。
そんな中でも世界中のプロライダー達からのリスペクトを集めたのはTom Van Steenvargen。彼のフラットドロップでのバカでかいフロントフリップには度肝を抜かれました。
あの高さのキッカケのないドロップオフでメローなローテーション、そしてビタ合わせのランディングはクレイジー過ぎましたね。
フロントフリップは回転の調整がバックフリップよりも格段に難しいので、フロントフリップをやる事が出来てオーバーローテーションで転倒経験のあるライダー達は皆んな魂を揺さぶられたと思います。
そして今回も話題となっているBrendan Faircloughのランですが、彼のランは確かにビッグマウンテン的要素のあるラインとランで素晴らしかった。
しかし彼のランはジャジ陣には印象が良くなかった為にかなりのロースコアとなってしまいました。
僕の見方でも正直な所、ジャッジ陣のスコアに賛同します。なぜなら、彼のランはこの競技の採点基準に照らし合わせて見ると分かるのですが、得点を出しずらいのです。
ランページのジャッジ基準は以下の通り。
・DEGREE OF DIFFICULTY(難易度)
・TRICKS AND STYLE(エアトリックとスタイル)
・FLUIDITY AND CONTROL(走りの流れと正確なコントロール性)
・AMPLITUDE(リスクを冒してまでのバカでかいヤバさ)
DEGREE OF DIFFICULTYで見ると、より自然なスティープなシュートを攻める姿勢とランや、ロックへのステップアップからのドロップはテクニカルだったかもしれないですね。
さらにキャニオンギャップでのバックフリップは高得点であってもおかしくはないかもしれないです。
でも超細かい見方をすると、Brandon Semenukだったらあのロックの上にバースピンを入れて飛び乗り、テールウィップをしながらランディングしたかもしれない。
キャニオンギャップはTyler Maccaulのトランスファー気味のキャニオンギャップドロップに比べたら明らかに小さくてイージー。
そんな細かい所まで見ているんです。
TRICKS AND STYLEで言うと、彼が行ったトリックは小さいステップダウンでのスーサイドノーハンダーとキャニオンギャップでのバックフリップのみ。
FLUIDITY AND CONTROLで見てみると、確かに絶妙なコントロールテクニックでバイクコントロールをしていました。
でもラフでテクニカルなセクションは前半のシュートラインと途中キャニオンギャップ前の短い区間のみ。それ以外は他のライダーと同じで整備された走路を走っていました。
そしてAMPLITUDEを見てみると、短いキャニオンギャップのバックフリップもその他のシュートラインも、他のライダー達がチョイスしたスティープでテクニカルなラインと比較しても、そこまでとんでもないものではなく、大差はなかった。
どれだけリスクのあるあり得ないラインを、信じられない様なとんでもないランでクリアしたか。
それがAMPLITUDEの意味合いだと思うので、このAMPLITUDEでの得点も低かったのだと思います。
本人が言っていた様に最後のトリックジャンプでバックフリップNACを決めていれば、状況は少し変わっていたかもしれませんね。
Brandon SemenukもSzymon GoziekもTyler Mccaulも高次元のスキルを持ってとんでもないリスクを冒し、ジャッジ基準に沿った形でハイスコアが出たのだと思いますよ。
だってBrandon Semenukなんてスタートからシャレオツなスタイルを出してマニュアルドロップからスタート。
その後トラックドライバー(360バースピン)でのドロップオフ、バックフリップCANでのドロップオフ、そしてリリーパッドのバカでかい2段ドロップオフでのオポテールウィップ(得意ではない方向のテールウィップ)、そして最後のトリックジャンプではオポ360で締めのラン。あのラインでそんな事出来るライダーはどこにもいないですよ。
Brandon Semenukだからこそのスタイルで高次元かつ鬼アンプリチュードのランだったのではないでしょうか?
しかもBrandon Semenukは1本目の転倒があったので、2本目のランを強風を覚悟して出走しました。2本目を走ったのは全ライダー中Brandon SemenuckとThomas Genonだけです。
あの強風のコンディションの中で、あれだけのランをビシッと決めたBrandon Semenukは文句無しの優勝だったと思いますよ。
色々なサイトのコメント欄には、ランページはスロープスタイルではない、ビッグマウンテンコンテストだ!
だからセメナックのランはハイスコア過ぎる!と書かれているけど僕は全くそうは思いません。
だってスロープスタイルのコースって見たことありますか?走った事ありますか?って聞きたいですよ。
スロープスタイルのコースってリップは木で造られた条件の変わらない安定した物。そしてランディングや走路は水を撒いてカチカチにパックされていてスリックタイヤでも走れる様に綺麗に整備された物なんですからね。
それに比べてランページの走路は、砂漠地帯の乾燥した路面なので水を撒いてパックしたからと言ってカチカチに固まる訳でもなく、すぐに乾いてフカフカになって不安定になるんです。
言ってみれば1本1本のランで条件が変わる様なコンディションの路面状況の中、スロープスタイルのジャンプよりも何倍ものデカさのジャンプやドロップを充分に試走が出来ていないにも関わらず本番でキッチリと合わせてくる各ライダー達のその凄さたるや。
そんなテクニカルで急な路面であのデカさのセクションですから、それはスロープスタイルではなくもはやビッグマウンテンでしょう。
Brandon Semenukなんてそんな路面でも走行スピードが速く、さらにコンボやオポトリックでリスクを冒してのランですからね。
ただ普通に飛び降りるだけでもスーパーテクニカルなあのスティープなダブルドロップをオポテールウィップをやるなんてヤバ過ぎると思いません?
ジャッジ陣はその辺の細かい所まで見ています。彼らは各ライダーのラインを実際に歩いて距離を測定し、PCの画面では見えない細かい所までを事前に見た上での採点なんですよ。
さらに全てのジャッジはランページ経験者の強者達。ライダーと同じ立場と同じ気持ちになれる、世界でも数少ない精鋭達なんです。
そんな彼らのジャッジに対してみんな難癖を付けていますが、それじゃあ同じ路面でトリックをやってビッグドロップを飛んでみなさいよ!って。つまりはそう言う事です。
まぁセメナックがコンボやオポトリックを決めたりスティープなシュートを走る姿が、いとも簡単に見えてしまうので、路面が綺麗に見えてしまうのかもしれませんね。
セメナックはプラクティスの時から力が抜けた柔らかいライディングで、明らかに他のライダーとは違う動きをしていましたから。
今回の採点は文句無しにその通りだと思います。ジャッジの採点が必ずしも間違っているという事ではなくて、もしかしたら採点システムに欠陥があるのかもしれませんね。
本来ランページはビッグマウンテンフリーライドの大会であるがゆえに、みんなスロープスタイルの様な複雑なトリックのライディングが見たい訳ではない。
多くのファンから文句が出るのもしょうがないかもしれない。けれどランページと言う競技は進化をしていてそう言う競技なんです。
視聴者みんな好みの趣向やスタイルがあるのも分かります。でも自分が何が見たいかではなくて、その競技のルートに従うしかないのではないでしょうか。
見たい人は見ればいいし、つまらないと感じる人は見なければいい。なんやかんや結局はそう言う事だと思います。
まあ僕は来年のランページがもう今から楽しみで仕方がないですけどね。
ちなみに僕がどれだけランページを見る事に情熱を燃やしているかと言うと、ランページ当日は弊社で開催しているインストラクター養成講座と言うものを開催していました。
風の影響で時間が伸び伸びになって2本目のランを全て見終わる前に朝の講習時間がスタートする時間でした。
結果的には講習開始5分前に競技は終了して予定通りの時間に講習スタートが出来たのですが、もし風の影響が続いて講習時間になってしまったとしても講習スケジュールを変更する事を心に決めていましたのです笑
受講者の皆さんごめんなさい。
ランページの話は実際に会った時にでもしましょう。僕はシーズン中は毎日ふじてんにいるので声を掛けてください。
それではこの辺で!